「生態系」「人の生命・身体」「農林水産業」への被害を及ぼすものは、国外から侵入してきた生き物だけではありません。国内に自然分布していた生き物が、その自然分布域を超えて他の地域に導入された場合にも、同じような被害や影響をもたらすことがあります。また近年、「地域的固有性の維持保全」という観点からの問題意識も高まってきています。
このため、平成27年3月に環境省、農林水産省、国土交通省が定めた「外来種被害防止行動計画」では「外来種」という言葉を「導入(意図的・非意図的を問わず人為的に、過去あるいは現在の自然分布域外へ移動させること。導入の時期は問わない。)によりその自然分布域の外に生育又は生息する生物種」と定義するとともに、「国外由来の外来種」と「国内由来の外来種」という区分を設け、上記の被害を及ぼす又はそのおそれがある種を「侵略的外来種」としました。「特定外来生物」は、「国外由来の外来種(=外来生物法における「外来生物」)」のうち、侵略的外来種であって、特に外来生物法により指定された種、ということになります。
ここでは侵略的外来種が及ぼす3つの被害や影響について解説します。
小笠原諸島は、どの大陸とも陸続きになったことのない「海洋島」であるため、生きものたちは独自の進化を遂げてきました。そのため、小笠原諸島にしかいない固有の生きものが多く生息し、島固有の特異な生態系が形作られています。
いま、小笠原諸島では、外来トカゲ「グリーンアノール」が問題となっています。希少な昆虫類がグリーンアノールに捕食され、個体数が激減している種もあります。
セアカゴケグモは、すでに日本各地で定着が確認されている毒グモで、年々生息域を拡大しており、平成26年には東京都でも発見されました。その後、現在までに6区市で確認されたが、いずれも個体であり、まだ定着は確認されていません。
基本的にはおとなしい性格ですが、素手で掴もうとすると咬まれることがあります。強い毒性を持つセアカゴケグモの雌に咬まれると、全身症状(痛み、発汗、発熱)や皮膚の壊死など重症化する危険性もありますので、十分に注意してください。
近年、アライグマなどについて都民からの相談が増えており、有害鳥獣として捕獲される数も増加しています。
被害の多い農作物は、糖度の高い果物や野菜類を中心にスイートコーン、カボチャ、スイカ、ブドウ、ナシ等が報告されており、その問題は農作物への被害だけでなく、生態系や住居などの生活環境にも及び、また、被害地域は都心部へも広がってきています。